12月15日〜12月19日にかけてTIER IVのAutoware workshopに参加しました!
AutowareとはTIER IVが開発を主導しているオープンソースソフトウェアで、本イベントはそれを実践形式で学ぶワークショップです。
プロダクト開発コースとMLOpsコースがあったのですが、今回僕はMLOpsコースで参加しました。
参加前はコースの内容は把握していなかったのですが、プロダクト開発コースはAutowareのアルゴリズム改良(題材としては道路上で停車してる車を避けるタスク)、MLOpsコースは 次年度のAIChallenge のプロトを体験して、大会の改善に向けた提案をするコースだったようです。
今回僕たちは以下のリポジトリとページを参考に、TinyLiDARNetというEnd-to-End機械学習モデルを使ってシティサーキット東京ベイをガウシアンスプラッティングしてできたシミュレーション上のサーキットをレーシングさせる事を目指しました。
GitHub - AutomotiveAIChallenge/aichallenge-2025: Japan Autonomous AI Challenge 2025
Getting started: TinyLiDARNet - 自動運転 AI チャレンジ 2025
手法としては短期間ということもあり、模倣学習で行なっていくことになりました。
ハードウェアとしては貸付されたubuntuサーバ(RTX 3070が載っていました、30万円ほどのものらしい)を使いました。
1日目
初登校です。環境構築を行いました。2日目までまたがるかと思いきや、帰る頃にちょうど完成しました。Pure Pursuitアルゴリズムでシミュレータ内で車を動かす事にも成功しました。
2日目
Pure Pursuitアルゴリズムのパラメータを変更する事でサーキットを一周させる事に成功しました。速度を落としてしまえば結構簡単に周回が可能でした。これでアルゴリズムからのデータ収集が可能になりました。
また、なぜか僕の運転が上手いということも判明しました。手作業によるデータ収集でtrain 7rep, val 3rep分取得して、+2repほどvalにPure Pursuit産のデータを入れて学習させました。学習時間としては10分もなかった気がします。結果、1個のカーブも曲がらずにクラッシュしました。右向きカーブなのに左に行こうとしてました。
不可解すぎて気になったため、帰宅後、自分のサーバー上でも環境構築を行って訓練データを+30rep, valデータを+10repほど入れたのですが1,2カーブ目でクラッシュ。困ったぞというところで、横の席の人が10repほどの僕の手動取得データを使っただけなのに3カーブ目くらいまで行っていたことを思い出しました。彼女はtrainとvalに同じデータを入れていたと言っていたのと、本課題の範疇内ではコースが一つしかない(=色々なコースに対する汎化性能を高める必要がない)なと思って、僕もリークさせる事にしました。小さなエポックでテストしてみたところ、リークさせた方が明らかに超えられるカーブが増えていました。
この時点で、リークさせた方がいい以上の情報がなく、良質なデータを増やすかモデルを改良するか学習手法の工夫か、どう手をつけていいかという状態だったので結構ピンチだなと思っていた記憶があります。
3日目中には1周させていないと木曜日に何も発表できない可能性が高まってしまうので、2日目夜の就寝時間でなるべく多くの以下のような対策をしました:
- データのクレンジング
1日目のデータはrosbag取得開始から数秒ぼーっとしていたり、クラッシュしてから録画を止めたりしていたため、rosbagの開始終了前後10秒をクロップ
- 改造したモデルの学習
畳み込み層+1、MLP層+1、あと残差接続をした複雑化モデル
逆に、MLP層を減らしたり各層のパラメタ数を減らしたモデル
時系列情報を入れたモデル(CNNに過去5フレーム分の入力をいれるようにしました。また、bidirectional LSTMも実装し、こちらは訓練時は未来フレームも参照するようにした)
過去の自己の情報を持ったモデル(過去フレームの自己位置と加速度等を入れました)
- データ拡張
シーケンスごと(つまり1つのrosbagごと)に、50%でコースとステアリングを反転させて読み込むデータローダーを実装してみました。
3日目
朝に学習済みのモデルを試したところ、すんなりと未改造のモデルが1周してしまいました。リークが効いているようです。

S字カーブの切り込みや、アウトコースからカーブに入る謎テクニックといった僕のテクニックを模倣してるのが見えて流石に嬉しかったです (後々調べたら、アウトインアウト、みたいにテクニック名が正式にあるみたいです: https://toyotagazooracing.com/jp/blogcolumn/column/349/)
また、未改造モデルでデータ拡張の効果も確認しました。データ拡張していないデータで学習したモデルに比べると拡張済みは大体+1,2repは安定しているようでした。
他のモデルはというと、複雑化させたものはあまり動かず、簡略化のものは普通に動きました。時系列と自己状態モデルは試していません(喜びに浸っていたのと、元々レーシング目的で、あまり推論に時間がかかるモデルに対しては懐疑的だったので、TinyLiDARNetくらいの簡単なモデルが動くならそれが一番だと思います)
クレンジングの効果については、後々分かった事ですがあまり意味はなさそうでした。というのも、他の人達も充分にデータを増やし(10〜15repをそれぞれ訓練と評価に)、周回に成功していたのですが、僕の手動操作のクラッシュ部分も含んだデータだったためです。
3日目にみんな基本課題を終えたため、みんなそれぞれ発展課題に取り組む事にしました。僕は事前マップ情報を使って、周回に必要なデータを減らすことができないか調べる事にしました。
事前マップ情報のエンコーダーをいくつか作成し、学習させて眠りにつきました、、、、、
4日目
学習が朝起きても終わっていません。まじか!
最初のTinyLiDARNetでそんなに時間がかからない印象だったので、調子に乗ってしまい、エポック数を2倍に、サーキット環境に過学習させてもいいので,スケジューラーを入れつつearly stoppingをやめていたのが原因そうです。ワーカーとかバッチサイズちゃんと増やせるか調べていたらよかった、、
また、ros2関係のなんかよくわかんないエラーを引き当ててしまい(なんかのlaunchをするかlinstenするかしないといけなさそうだった)、シミュレータもいかれてしまいました。スライドもまだできていない。
ということで、事前マップを入れた結果は見られず発表することになってしまいました。すいません、、


懇親会ではFocal Loss(参考記事: https://zenn.dev/boh_mouse/articles/1e84d170b4212a )などのクラス不均衡に対する対処法をお聞きしたり,一般的に会社の業務や雰囲気など知ることができました.事故のケースは滅多に起こらないので,こういったテクニックを使えばさらにクラッシュ率が下がるのかなーとか,教師なしでも強化学習できたりするのかなーとか,考えていました.
5日目
TIER IV実証実験でバスが国際展示場付近で走っているので、それに乗せていただく事になりました。

感じた事としては、
良いこと
まっすぐな道だと法定速度がずっと維持されるので、ジャークがなく、手動運転よりも自動運転の方が乗り心地がずっと良いなと思いました。また、実際にAutowareがモニターに出ていて、歩行者や車がリアルタイムで映し出されていたりするのは社会実装って感じがしてめっちゃワクワクしました
信号機が赤なので止まる、といった説明もAutowareのマップ上に出ていて、説明性があるなと思いました(Waymoに乗った時の動画を今見返したら、Waymoはウィンカーの認識やSTOPサインの認識はマップ上に出してるけど信号機は出してない、なぜだ...)
課題
- ウィンカーの認識の対応がまだ
ハイライト除去など自分が今やっている事の応用先の一つになりそうだなと思いました。
- 道交法を無視している車に対して、ルールベースの自動運転車だとどうしたらいいか分かんなくなったりする
わけ分かんない状況に対しルールベースで固まるよりも、なんかしらの出力は出るので、そういう意味で今のTIER IVのMLアプローチとルールベースのハイブリッドの方向は良いのかなと思いました。
また、日本の事故に対する意識の高さや、それに伴う市場化のハードルの高さも感じ取る事ができました。今自動運転を先導しているWaymoやテスラがあるアメリカと比べ、日本では以下のような点から自動運転の実践と実験の難易度の差が大きい気がしています。
- 事故や人間の命の価値への意識がアメリカと比べて高い
日本(+a)と比べてアメリカ(というか他の国)はなんというか、命の価値が軽視されている気がします。ボコボコの道路、人と車両の距離や荒い運転。明らかに危ない、日本の安全基準や倫理観だと許されないようなことが許されている国が多い。アメリカもそうな感じがします。これは悪いように見えますが、研究開発の土壌としてはやりやすい。
例えばアメリカが10年で月に人間を送った背景としては、パイロットの死亡事故を伴ってもやめないほどの急進的な開発への姿勢がありました。最近の著名なLLM企業を見ても、多少の法律を逸脱した学習データを使っていたりしますね。この辺りのやっちゃえ感的なところがアメリカ企業のスピード感につながっているのかもしれません(良いか悪いかはさておき...)
- 車社会でデータが集まりやすく、歩行者が少ないため初級向けの実証実験が行いやすい
Waymoは大都市でサービスを始める前に、アリゾナ州フェニックスでサービスを始めました。この都市は僕の故郷である姫路市と姉妹都市であるくらいの街で、つまりアメリカの中でそこそこな田舎(ただ過疎ってはない)です。さらに歩行者がアメリカは極端に少ない国で、人を轢く可能性が日本より起こりづらい事も考えられます。Waymoはこういった開発に有利な土壌でモリモリ開発してきたんだろなと思いました。
余談: 開発にあたり以下のサイトがすごく参考になりました!
AIChallenge 2025の活動記 (番外編:エンドツーエンド自動運転)